好きになった彼は幽霊でした。

「…違います。私、本を返しに来ただけで…。」


「え、違うの?なんだ…この時間に此処に来るから、てっきりそうかと思ったよ。でもまぁ、君はそんな感じじゃないか。」


「あの…密会ってなんの事ですか…?」


「君、本当に知らないの?」


「…なんの話ですか??」


「なんのって……あ、やば!ちょっとこっち来て!」


「え、えっ??」


「いーから早く!」


彼に手首を掴まれて無理矢理引っ張られる。
本棚の陰へと連れてこられ、隠れるように身を潜める。


「な…なんで隠れなきゃいけないんですか…!」


というか、近い近いっ…!


「しーっ!見つかるから静かに。」


そう言うと彼は手で私の口を塞いだ。
その瞬間、ひやっと口元に冷たさを感じた。
冷たさの原因は彼の手だった。

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