好きになった彼は幽霊でした。
「雪姫ちゃん可愛いし、絶対笑わない。約束するから顔見せて?ほら、はーやーくー。」
私が意を決して手の力を緩めると、優馬君によって手を退かされる。
「ん…可愛い。」
優馬君にそう言われてから、唇に冷たく柔らかいものが触れた。
一瞬何が起こったのか分からなかった。
なんでって思った。だって、他に好きな人がいるのに、なんで私にキスするの?
「え、ごめん…!嫌だった?雪姫ちゃんが可愛くて、ついっ…!嫌だったならごめん…!」
私は自分の頬に手を当てると、自分が涙を流している事に気付いた。
「えっ……ご、ごめんなさいっ…!」
自分が泣いてた事に戸惑って、何を言っていいか分からなくなった私は図書室を飛び出してしまった。
「あっ、雪姫ちゃん…!」
優馬君の声が聞えたけど、気にせずに渡り廊下を通って階段を駆け下りる。
部屋に戻るとそのまま布団に潜り込む。
どうしよう…思わず飛び出してきちゃった。
今更だけど、戻った方がいいのかな。
でも、胸が苦しくて無理だよ。
私には優馬君がどういうつもりでキスしたのか分からなかった。
手で唇に触れると、冷たく柔らかい感覚がまだ残っている。結局その日は全然眠れなかった。