好きになった彼は幽霊でした。
あの日から雪姫ちゃんは、時折切なそうな苦しそうな顔をするようになった。
ひょっとしたら俺の事嫌なのかとも考える。
けれど、照れたり、拗ねたり、潤んだ目とかを見ると、俺の事好きなんじゃないかと思ってしまう。
もし君の幸せを願うのなら、俺は君から離れるべきだと分かってる。だけど、俺は君のそばにいたいと願ってしまう。
そんな真逆な二つの思いは俺の中でぐるぐると渦巻いている。
まぁ、悩むくらいなら本人に聞いたらいいんだけど。
真実を聞けない俺がいる。
聞いてしまったら、もう一度想いを伝えたら、全て終わりだから。
ガラガラとドアが開いて大きめの毛布を抱えた君が入ってくる。
そしてまた、君は俺を見ると嬉しそうに照れながら俺の名前を呼ぶ。
「優馬君、ただいまっ…。」
そんな可愛らしい君に、俺はまた心を奪われてしまうのだ。
「…おかえり、雪姫ちゃん。」
俺が君への気持ちを整理出来るまで、もう少し…あともう少しだけ、君と時間を過ごす事を許して欲しい。
俺のもう一つの願い…未練は、
“君に好きだと伝える事”なのだから。