好きになった彼は幽霊でした。
図書室のドアを開けると、言ってた通り優馬君が待っていてくれた。
月明かりに照らされる優馬君の姿は、やっぱりかっこよくて、素敵で。一瞬で心を奪われる。
「優馬君、ただいまっ…。」
「…おかえり、雪姫ちゃん。」
優馬君が私の名前を呼ぶだけで、私の心はキュンとなってしまう。
そして、優馬君に手招きされて隣へ座る。
「ほんとに毛布持って来たんだ?」
優馬君はクスクスと笑う。
「だって、寒いからって優馬君が言ったじゃない。」
「まぁ…そうなんだけどね。」
また優馬君がクスクスと笑う。
もう、意地悪なんだから。
私が頬をふくらませると、優馬君がつっついてくる。
「あ、ふくれた。…可愛い。」
「もうっ…優馬君のイジめっこ!」
「まさか。俺、女の子にだけは優しいよ?」
優馬君は誰にでも優しそうな気がするけど…。
「でもイジめるのは君だけ。だから君も…イジメられていいのは俺だけね。他の男にイジメられんの、禁止。」
優馬君の言葉はずるい。
自分は優馬君の特別なんだって錯覚してしまう。
でも、きっと、そんな事は有り得ない。
「雪姫ちゃん、月、満月だよ、ほら。」
どきどきしてる私をよそに、優馬君は涼しい顔で夜空に浮かぶ月を指さしている。