好きになった彼は幽霊でした。

「ほんと…綺麗。」


なんか月を見ると切なくなる。


そんな月を見て思い出したのは、竹取物語という御伽草子。


「なにしに、悲しきに見送り奉らむ。われをいかにせよとて捨てては上りたまふぞ。具していでおはせね━━━━…。」


物語にある古文の一文を思い出し、自然に口にしていた。


『こんなに悲しいのにどうして見送りができるの?どうしようと思って、私達を捨てて天にいくの?一緒に連れていって欲しい。』


という、月へ帰って行ってしまうかぐや姫に、おじいさんが言う台詞。


あ…さっき切なくなったのは、きっと月からかぐや姫を連想して、優馬君とのお別れを想像してしまったからだ。


でも、きっと意味を分かっているのは私だけ。


こんな意味不明な事ばっかりだから、一人だけ浮くんだ…。はぁ…私ってほんとダメ…。


私は言ったあとで後悔した。
けれど、優馬君の反応は予想外だった。


「文を書き置きてまからむ。恋しからむをりをり、取りいでて見たまへ。」


『手紙を書き置きしてから行きます。私の事を恋しく思う時は、この手紙を見て下さい。』


という意味の、かぐや姫の台詞が返ってくる。


「え━━━…?」


まさか優馬君が知ってると思ってなかったから、すごく驚いた。

< 61 / 105 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop