意地悪な両思い

 それからちょっと間をあけて、

「ねぇ。」

「んー?」

「……近くいってもいいですか?」
 私はそう聞いてみた。


さっきもそうだったけど、
いまだってダブルベッドってわけでもないのに、
どこにもぶつかってないんだ。

足も、手も。
体のどっこも。


私も速水さんも互いに遠慮しちゃって、
ベッドすれすれの端っこに寄ってるのかもしれないね。



「…あーうん、いいけど。」
 そうして、速水さんは布団を開けて腕を開く。

「おいで。」
 私は彼の腕に飛び込んだ。

大きな腕に包まれて、
顔も、体もぜんぶ速水さんに触れてる。


「ふふっ、速水さんの匂いだ。」

「無臭だよ、俺は。」
 若干照れたように私の頭をポンぽんと叩いた。

「ちがうもん、速水臭だもん」

「何それくさそう。」

「良い匂いだから安心して。」
 私はくすくすと笑う。


「腕枕しんどくないですか?」

「へーきだよ。
市田は?寝れそう?」

「うん。幸せ。」

「返事になってないけどね。」
 今度は速水さんが笑う。



でもなんか、なんかおかしい。
さっきから感じてたことなんだけど――――。

「速水さん?」

「ん?」




「なんでそんな寝かせよーとするの?」




「は?」
 そこで少しの間が生まれる。


「いや……別にそういうわけじゃないけど。
眠いかなぁ…って。」

「本当に?」

「うん。」

「無理に寝かせよーとしてるんじゃなくって?」

「でも。」
 だったら、だったらなんで。



「もう3回目ぐらいだよ?
寝ろって言ったの。」

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