意地悪な両思い
「休憩中?」
「です。
さっきまで外まわってたんで。」
あつ~といいながら、彼は外で買ってきたらしいスポーツドリンクで喉を潤す。
「あ、速水さんに休憩の許可は頂いております。」
「うん、お疲れさま。」
そう補足しなくても、別にサボってるなんて微塵も思わないのに。
ふざけて敬礼してみせる彼に思わず笑いがこぼれる。
「市田さんは?」
「さっきまで企画の発表してて、
長嶋さんたちにコーヒー持って行こうと思って。」
私は人数分のコップを手に取った。
「へぇ!
次は何するんですか?」
「また商店街のでね。
今まではお店を閉めてたんだけど、
今年の夏祭りには参加して、大々的に何かできないかなって。
っていってもまだ始まったばかりで、
何も決まってないんだけど……」
「その夏祭りってどこのですか?」
「隣の市のとこだよ。」
「僕、そこ毎年行ってます!」
「え、そうなの!?
なんか……プレッシャー感じちゃうなぁ。」
「大丈夫ですよ。」
苦笑いを浮かべる私を安心させるようにそう即答する。
「うん、ありがとう。」
内川くんの子犬みたいな笑顔に、今日も私はすくわれたみたいだ。
「あ、そういえば知ってます?
来週うちの部署、本部から一人寄越されるんですよ。
市田さん知ってました?」
「ううん、初耳。
うちの部署はそういうの滅多にないから。
異動ってこと?」
「いや、短期出張で1か月だけみたいです。
勉強しにくるみたいで。」
「へえ~。」
私はポットのお湯を沸かし始めた。