意地悪な両思い
「内川、来て早々悪いけど、
プロジェクター取ってきてもらってもいい?」
「あぁ、はい。
それだけでいんですか?」
「おーそれだけ。」
内川くんは持っていた書類を適当にテーブルに置いていく。
その背に、ちょっと分かりづらいから
「内川くんごめんね。
資料室の奥の棚の上に置いてあるから。」
って教えたけど、それがなくても平気とばかりに笑顔を浮かべて駆けてった。
「な~んだ。」
「え?」
すると、挨拶のときもぺこんとお辞儀しただけでそれまで一言も発していなかった木野さんが、可愛らしく私に顔を傾けてくる。
「市田さん何でいるのかな~と思ってたんですけど、
準備してくださってたんですね。
ありがとうございまぁす。」
にこっと浮かべる笑顔の後ろに見えるのは、彼女のふわっふわのくるみ色の髪の毛に似合うピンク色のお花畑。
だけどよくよく見ると、そのお花達には棘があって……。
「いえいえ……」
やっぱり木野さんっておっかないや。
理由もなくここにいたら、どーん!って締め出されそうな勢いだし、ははは。
「あれ、そういえばあいつは?」
速水さんが木野さんに問いかける。
「あとで来られると思いますよ~
つぎ、会議室ですって言ったんで」
そう答えながら、なぜか彼女は若干面白くない表情をしていた。
「場所わかんの?」
「朝、一通り説明しましたし。」
「いや、そうだけど……」
「長嶋さんと花咲かせていらっしゃったんで、
邪魔するのもあれかなと思って~。」
「あぁ…そう。」
彼女の毅然とした態度とは打って変わって、面倒くさそうに速水さんは後ろ髪をかく。
「じゃぁ俺呼んでくるから。
木野ここ頼むよ。」
「いってらっしゃ~い。」
なぜかそこで、速水さんは私の方をちらっと見た。
「え、何?」
何か言いたげな表情に、そう聞きたかったけど木野さんがいる手前下手なことは言えない。