意地悪な両思い
わたし、てっきり!?
「やっぱ男だと思うよね。」
そう言ったのは私じゃなくて木野さんだった。
続けて面白くなさそうにはぁーあとため息をこぼす。
「一色 司なんて名前、恰好よすぎるもん。
ていうか美人だし」
いつもの可愛らしい木野さんはどこへやら、そのまま空いているテーブルの上に足をくんで座った。
「木野さんも今日知ったんですか?」
「まさか。
ちょっと前に本部の人にリサーチして、その時にね。
私としたことが、もっと早く確認しとけばよかった。」
じゃなきゃ、お世話係なんて面倒なこと引き受けなかったのに。
だからさっき速水さん、木野さんに一色さんはって聞いてたのか。
木野さんがここにいる間は面倒を見る手はずだから。
「市田さんは?」
「え?」
「何も知らないの?一色さんのこと。」
「えーっと長嶋さんと速水さんの同期なんですよね?」
私の言葉に、そうねとにこっと笑う。
その笑顔が逆にこわいんだけどね。
「すごい仕事もできるみたい。
そんな人が1か月もこっちに来るなんて、なんか策略がありそうだけど。」
それは確かにそうかも…。
長嶋さんと速水さんクラスだったら、本部の方でも重要なこと任されているはずだし。
何かあったのかな……。
「あ、こっち戻ってくる。」
木野さんはテーブルからすとんと降りた。
その言葉通り、3人そろってこっちに向かってくる。
「せっかくだから、市田さんも挨拶するよね?」
「あぁ、そう…ですね。」
なんかちょっと緊張するなぁ。
私は木野さんと一緒に会議室前に出ることにした。