意地悪な両思い

「あのーそろそろ仕事戻りませんか~。
内川くんもそこで待ちぼうけてますし。」
 木野さんが指さす方を見ると、いつからそうしてたのかプロジェクターを抱えながら少し離れた所で立ち尽くしている。

「悪い、わるい、ごめん内川。」
 速水さんは駆け寄りながら、彼からそれを受け取る。

「あぁいえ僕はそんなそんな。」

「じゃぁ仕事戻りましょっか。」
 ぱちんと手を鳴らす一色さんにお礼を言ってその場を後にする。


「綺麗な方ですね。」
 戻りながら、思わず長嶋さんに私はそう言ってしまった。

「そうだなー。」

「長嶋さんが珍しく身なり整えててビックリしましたけど、理由がわかりました。」

「え、見てたの?」

「見てますよ」
 目を丸くする長嶋さんにふふふっと私は笑い返す。

「あ、そうだ。
来週の飲み会、一色も呼んでいいか?

飲み会とかがなきゃ、絡むこともないだろう。」

「あぁ、そうですね。一色さんがよければですけど。」

「大丈夫、あいつすごいお酒好きだから。
飲みの席断られたことそうそうない。酒豪だぞ、酒豪」
 一色さんに聞かれてたら怒られますよ。
私はくすくす笑ってしまう。

「まぁ今週の金曜日も速水と一色たちと飲むんだけどな。
木野さんと内川くんもくるって言ってたっけか。

市田は―――」

「私、金曜日は片づけたい仕事があって。」

「あぁ、川上さんのとこの?」

「はい。」
 速水さんも行くんだ。 
まぁ金曜は仕事で忙しいから一緒に帰るのが難しいって断ったのは私なんだけど。

速水さん何も言ってなかったけど、あとで教えてくれるのかな。
私も仕事たまってなかったらなぁ。


「あんまり気張りすぎないようにな。」

「はい。」
 若干気になりつつ、私はそこで自分のデスクに戻った。

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