意地悪な両思い

 姿が見えなくなって、思わず私はその場にしゃがみ込んだ。

言われている間、私は何も言い返せなかった。
体横にぶら下がってる空っぽの手を、私はぎゅっとその場で握ることしかできなかった。


「速水さんは私のもの」


そういうことができなかった。


きっとさっきのは木野さんからの宣誓布告。
その程度の気持ちなら、さっさと身をひけっていう。

木野さんは一色さんと奪い合う気満々なんだ。
女の闘いっていうか。
男だったら、タイマン喧嘩みたいな……。



 じゃぁ、わたしは?
ああいわれて何も言えなかったわたしは?

彼女っていう立場があるにも関わらず、ひとりびくつくだけで。

現にいまも、私は速水さんに会ってぎゅって抱き着いて安心を得ようとしてる。
大丈夫だって確証を得ようとしてる。

自分ひとりで立ち向かうことすらできずに。

こんな弱いわたしなら、きっと木野さんに。
ましてや一色さんになんて絶対勝てないよ。

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