意地悪な両思い

「出かけるのはどうする?」
 まだ若干呆れてる私に気づかず、続けて彼が口を開く。

「出かけるの?」

「デート。」

「あ、あぁ!」
 一瞬何のことか分からなかったが、彼が口に出した言葉でようやくピンとくる。

もしかして、今日一緒に帰らないかって誘ってくれたのもその話をしようとしてのことでだったのかな。


「どうしましょうか。」
 案がすっと出てこない私は忽ち速水さんに聞き返した。

「何か行きたいとことかは?」

「うーん……行ってみたいところ。」
 そう言われてもなぁ。正直、速水さんと一緒にいれれば私としては何でもいいわけで……。

まぁデートの定番中の定番といえば動物園、水族館、遊園地あたりだろうけど。

でも、今あげた3つとも車で行くと時間かかるんだよね。
私はともかく運転するのは速水さんだし、デートが負担になっちゃうってのも。


「思いつかない?」

「いや、そういう訳じゃないんですよ!」
 あー、また速水さんに気を遣わせちゃう。

絶賛パニック中の私を横目に「そんな必死にならんでも。」と彼は笑う。


「付き合って初だし、映画とかどう?」

「映画ですか?」
 こくんと速水さんは頷く。丁度良く信号が赤になった。

「前話したじゃん、トランスファーマー。
あれの番外編の新作が公開されたみたいでさ。

なんかタイミングいいなぁって思って。」

「へー!新作……。知らなかったです。」
 トランスファーマーの番外編―――そういえば、前そんな話もしたなぁ。DVD今度借りに行くんですよって電話で速水さんに伝えて、面白いよって勧めてくれたのがそれだったっけ。

農家の野菜がロボットになるっていう斬新な設定もそうだけど、アクションもすごくて、ちょいと挟んでくる主人公たちの恋愛模様も面白かった。

まだ2作しか見てないけど、番外編……確かに気になる。


「私も見たいですし、今回は速水さんの案でお願いしましょうか!」
 映画デートだったら、疲れの心配もないしね。

「じゃぁ決まり。」
 くしゃっと彼は破顔する。

「来週でいい?」

「はい。」
 着ていく服どうしようかな。

そんな風にそわそわしちゃいながら、すぐにデートの日付を私たちは決めた。

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