意地悪な両思い
「ただいま」
飲み会から帰ってくると11時回っていた。
約束通り、飲み会から直で速水さん家。
長嶋さんは一色さんと帰って、内川くんとは帰る方向が一緒だから途中まで同じ。少し罪悪感はあったけど、バイバイしてこっそり後から速水さんと合流した。
「疲れた?先風呂入っていいよ。」
部屋に入ってすぐに、速水さんは給湯ボタンを押してくれた。
お湯張りを待っている間、私はテレビが見える位置の床に座る。速水さんはというとお風呂に入るまで待てなかったらしく、スーツを脱いですっかり部屋着に着替えていた。
コンタクトも外して、家モードの黒縁眼鏡。
何回も言ったことあると思うけど、めがねの速水さんって本当格好いい。
「なに?」
「ううん。」
思わず見つめてしまった私は、何でもないよと誤魔化した。
「一色さんと仲いいね。」
「ん?」
そう聞いたのは、一色さんが元カノかもしれないから気になって聞いた訳じゃなくて、ただ単純にそう思ったから。
「うるさいだろ。
長嶋もいるから余計なんか砕けけちゃうというか」
「聞いてて楽しかったよ。
一色さんも優しいね。」
私の言葉にどこか安心したように笑う彼。
「市田は優しいな、本当。
……今日。
ごめんな、いろいろ。」
「え?」
「ここおいで」
速水さんはポンポンと自身が座っているソファ横をたたいた。
座ろうと思っていた私だけど、座る前に手を広げた彼に捕まって、そのままソファに覆いかぶさるように倒れる。
「座ろうと思ったんだけどな。」
「だめ?」
「だめじゃないよ。」
既にうずめてるのに、もっと彼に近づきたくってふりふりと私は顔を振る。
そんなことしたって、もうこれ以上近づけやしないのにね。