意地悪な両思い
内緒の初デート
「出てくるの早かったかな……」
アパートの駐車場、ぽつりと立つのは私だけ。
駐車場に何台か車は止まってるけど、
人が出てくる気配はしてこない。
そりゃ一緒のアパートに住んでいるわけだし、すれ違ったら挨拶はするけど、駐車場で待ってるところ見られるのはちょっと照れくさい。
ましてや速水さんを待ってるわけだし、
これからデートなんだって思われるも…。
いやちょっとどころかかなり照れくさいぞ!?
そんなアパートの人はともかく、すぐ近くの一軒家のおばさんもお喋りなんだよね。理由はもう忘れてしまったけど、以前30分近く捕まってしまったことがあるのを思い出す。
ともあれまだ速水さんが来るには早いので、そのまま駐車場横に小さく設置されている長細いプランターの塀へ私は軽く腰かけた。
―――午前10時10分。いつもなら絶賛まだベッドのうえ。
でも今日は8時には起きて、
お化粧して髪を巻き巻きして。
早くに家から出て、おまけに身に着けてる服は上下ともにお気に入りの服。
トップスは長袖の、柔らかい印象を与えてくれるホワイト。
スカートは、スウェードの淡いオレンジ色。
生足には自信がないけど膝丈だから我慢できてる。
初デート…だもん。ちょっと冒険しないと、ね。
汚れがついていないか服装を再確認しながら、空いている手を埋めるようにポチッと電源ボタンを押して携帯を開いた。
「まだ1分しか経ってない。」
ばかだな私、全然動いていない時計の数字にくすっと笑ってしまう。
それだけ楽しみってことだよね。
『今から家出るからね。』
10時前に速水さんから来ていた文字を、何気なしにもう一度目にいれた。
しかし、速水さんって私服、どんな感じなんだろうな。会社じゃスーツだから全然見当もつかない。
唯一見たのは部屋着だっけ。
彼が熱を出して、私がお見舞いに行ったときに見た緩い服の。
うーん、益々緊張してきちゃった。
まぁ、別に男の人の服とかそんなしらないし、何だっていんだけど。
それこそ、服着てさえいてくれたら
……って、それは無頓着すぎ?