意地悪な両思い
「着きました?」
「着いたね。」
それから30分ほど経って、目的地のデパートへたどり着く。
3階建てで、最上階に映画館が併設されているここいらじゃ一番盛況しているんじゃないかというデパート。案の定というべきか、お店を365度囲うように大きく設置されている駐車場もなかなか埋まっていた。
「さすがに多いですね。」
「うん、なんかイベントでもやってんのかな?」
家族連れが多いしと、言葉をつづける彼にそうですねと返事する。
「立体駐車場にとめよっか。
平面ないや。」
「うん。」
速水さんは平面駐車場からゆっくりと抜け出す。
この調子だと映画館もかなりこんでそうだなぁ。
映画のチケット大丈夫かな?
用意してないけど……
と思った矢先、
「大丈夫、チケット事前に頼んでるから。」
そう何も言わず、速水さんは答えてくれたんだからやっぱりすごい。
「市田は単純だからね。」
なんて彼は別にすごいごとじゃないよなんて言ってるけど、絶対速水さんしかできないことだと思う。
なんでこんなに私が考えてること分かるんだろうな。
やっぱ速水さんの透視ってすごいや。
下手したら占い師とかできるんじゃないかな。
彼はそんな風に私が考えているとは知らず、同じく3階仕立てになっている立体駐車場へと入った。
ぐるぐるぐるぐる、車が円を描いて上へと動いていく。
「3階にとめれたらいいけど、多いかな。」
なんて速水さんは駐車の心配してるってのに、
「目、回っちゃいそうですね。」
くすっと私は呑気にそんなこと言ってるもんだから、
「無邪気だなぁ。」
彼にこつんと頭を軽く小突かれる。
「ごめんなさい。」
まぁ速水さんも私の言葉に笑ってくれてるんだけど。
結局お店の入り口に近いとは言えないまでも、3階に停めることができ私たちは車を降りる。
「映画まで30分以上あるから、適当にぶらぶらしよっか。」
「はい。」
パタパタと彼の隣へ私は駆け寄った。