意地悪な両思い

 お店へとつながっている外の通路を仲良く並んで歩いて、中へ足を踏み入れると一気に活気だって耳がやかましくなる。

おそらくゲームコーナーが近くにあることも関係してるのだと思うけど、

「人、多いな。」
 速水さんがそう言葉をこぼした途端にも、私たちの隣を子供が駆けていく始末。

「元気だ。」
 やっぱり子供連れが多いいなぁ。お母さんのそばに駆け寄っていくその子を、私はほほえましく眺めた。


「服とか見る?」

「あ、あぁはい。」
 じゃぁこっちだねと、先導してくれる彼についていく。

1つ下に階を降りた感じ、とりあえずアパレルブランドのテナントさんが多く並ぶ一角へ速水さんは行こうとしてるみたいだ。

「買い物すき?」

「服見るのはすきかもです。」

「そっか。」
 入りたいところあったら遠慮せずいいなよと、速水さんは優しく告げてくれた。


 でも男の人とこんな風にショッピングなんて、最近めっきりしてなかったからどうしたらいいのか分からない。

というか要するに、
お店に入ったとしても速水さんに気を遣っちゃってゆっくり見れないんだよね、!

女物なんて、
速水さんは見るものないだろうから…!


だから、結局まだ2店目だというのに

「見るものないですよね?
私大丈夫ですから、速水さんみたいものないですか?」
 そういって、早々に彼に音をあげてしまった。


 自分の買い物に付き合ってもらうより、速水さんのショッピングに付き合う方が私にとっても楽しいはずだよ。彼の口から落ちてくるはずの「分かった」という言葉を、大人しく私は待つ。

ところが、


「市田、これ似合いそう。」


「え?」

「これ。」
 私の言葉を無視して、速水さんは私に一枚のワンピースを差し出してきた。

夏用の新商品らしく、色は真っ黒ながら半袖で胸元からひざ下にまで伸びる生地すべてに花柄の透け感がある。中にキャミソールさえ着れば、これ一枚でコーディネイトが完成しそうだった。

「あんま好きじゃない?こういうデザイン。」

「いえ、好きですけど、」
 とっても可愛いし。

けどちょっと気になることがあって。

「……速水さん、こういうのが好みなんですか?」

「ん?」

「いえ、こういうの好きなのかなって、好きなんですか?」

「ん?」
 ちょ、ちょっとなんでうんって言って認めてくんないのよ!

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