意地悪な両思い

「他、なんか気になるものあった?」
 またしても速水さんはそう言って、するりと答えを誤魔化す。

「うーん、特にないかな。」
 もういいんだ!
速水さんがそうだって言ってくれなくても、速水さんの好みだって勝手に思っておくもんね。

「えっと、サイズはMでいんだよね?」
 ん、サイズ?

「はい、そうですけど、」
 私身長ないですから……ってなんでサイズ?

……え、まさか?


「これ今日プレゼントね。」


 目線がぶつかったタイミングで、ポンと彼は私の頭に手を置いた。

「え!ちょ!速水さん!?」
 待ってと声をあげる私をまたも無視して、勝手に彼はそそくさとレジへ服を持っていく。

慌てて背を追ったが、
彼の手中に収められているワンピースにようやく手が届くというところで、

「お預かりしますね。」
 と、今度は店員さんに取られてしまった。


「速水さん、ちょっと!」

「市田うるさい。」
 しーっと口元に人差し指を軽く当てて、スマートにクラッチバックから財布を取り出す彼。

既に店員さんがお会計をしてくれているわけだし、他のお客さんもいる手前、それ以上わーわー騒ぐわけにもいかない。


うー、勝手なんだから!

大体なんのプレゼントなんですよ!
私、誕生日でもないし、今日はデートってだけでしょうがー!


「ありがとうございました。」
 結局何もできず、そのうえご丁寧にお店入り口まで見送られた私たち。

「はい、どうぞ。」
 紙袋に包まれたそれを店員さんから受け取ると、速水さんは私に渡してくれた。

「……ありがとうございます。」
 言いたいことはケッコウあるけど、とりあえずはとりあえずはそう、彼に甘えてこぼしておく。

けど、

「速水さん?」
 3秒後には耐えきれず、すぐに何のプレゼントなんですかと追及してしまった。

< 28 / 140 >

この作品をシェア

pagetop