意地悪な両思い
「他、なんか気になるものあった?」
またしても速水さんはそう言って、するりと答えを誤魔化す。
「うーん、特にないかな。」
もういいんだ!
速水さんがそうだって言ってくれなくても、速水さんの好みだって勝手に思っておくもんね。
「えっと、サイズはMでいんだよね?」
ん、サイズ?
「はい、そうですけど、」
私身長ないですから……ってなんでサイズ?
……え、まさか?
「これ今日プレゼントね。」
目線がぶつかったタイミングで、ポンと彼は私の頭に手を置いた。
「え!ちょ!速水さん!?」
待ってと声をあげる私をまたも無視して、勝手に彼はそそくさとレジへ服を持っていく。
慌てて背を追ったが、
彼の手中に収められているワンピースにようやく手が届くというところで、
「お預かりしますね。」
と、今度は店員さんに取られてしまった。
「速水さん、ちょっと!」
「市田うるさい。」
しーっと口元に人差し指を軽く当てて、スマートにクラッチバックから財布を取り出す彼。
既に店員さんがお会計をしてくれているわけだし、他のお客さんもいる手前、それ以上わーわー騒ぐわけにもいかない。
うー、勝手なんだから!
大体なんのプレゼントなんですよ!
私、誕生日でもないし、今日はデートってだけでしょうがー!
「ありがとうございました。」
結局何もできず、そのうえご丁寧にお店入り口まで見送られた私たち。
「はい、どうぞ。」
紙袋に包まれたそれを店員さんから受け取ると、速水さんは私に渡してくれた。
「……ありがとうございます。」
言いたいことはケッコウあるけど、とりあえずはとりあえずはそう、彼に甘えてこぼしておく。
けど、
「速水さん?」
3秒後には耐えきれず、すぐに何のプレゼントなんですかと追及してしまった。