意地悪な両思い

 それが正しいのかそうじゃないのか分かんないけど。

うーん、本当どっちが可愛気があるんだろう、
今みたいに謙遜するのと、素直にありがとうって受け取るの。

「まーまー。」
 肝心の彼はから返事してるけど。
おまけに今度はどこへ向かおうとしているのか、足の方向は通路右。


でも、なんだかしてもらってばっかりというか、今だってリードもしてもらってるわけ、だし。
素直にありがとうとは、とてもじゃないけどすぐに言えないよ…。

彼の横一歩後ろを歩きながら、私の頭はだんだん下がっていく。


「市田。」

「はい?」
 ぱっと私は頭を彼にあげた。

「次のデートとは言わないから、いつか着てるとこ見せてね。」
 くすっと緩む彼の目、またもポンと撫でられる私の頭。


なんでだろうな、さっきまでうだうだ考えてたってのに、

「……しょうがないな。」 
 そうやって速水さんに優しくされると、可愛くない返事でさえ平気でできちゃうのは。


買って貰ったばかりの服の袋を掴んでいる左手にも自然と力がこもっっちゃうし。
私って単純すぎ…?

「今度は速水さんにプレゼントさせてくださいね。」

「俺はいーよ。」

「なんでですか。」
 自分だけプレゼントしてくれといてそれはないです。

「はいはい。」
 くすくす私たちは歩きながら笑いあう。


「あ、市田。」

「へ?」
 と、突然グイッと私の体が彼の腕に丸め込まれて、その勢いで私は一歩前へ。

「あ、すみませんっ。」
 人にでもぶつかりそうだったのかな。

支えてくれた彼の腕が離れていく―――最後、不自然に彼は私の右手に彼のそれを沿わせながら…


って、これって。


「……」

「どうかした?市田?」

「な、なんでも!」
 さっきとは別の理由で私の頭が下がる。


「手、つないでるだけなんだけど。」
 くすっと速水さんは私の反応を楽しみながら、意地悪く笑った。

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