意地悪な両思い
「速水さん、家についたら連絡くださいね。
心配ですから。」
「ちゃんと帰れるって。」
「分かんないですよ。事故とか事故とか事故とか。」
「事故しかないじゃんか。」
「だって事故でしょう―よ。」
今度は彼がハハハっと笑った。
「じゃぁ…そろそろ帰ろうかな。」
21時近いし。
「そですね、本当ありがとうございました。」
「ん、分かったから。もうありがとう聞き飽きたよ。」
そう笑いながら告げてきた彼の冗談に「えー?」と思わず破顔してしまった。
「じゃぁ市田、ちょっとこっち。」
「なんですか?」
すると彼はもっと近く近づいてとばかりに小さく手招きしてくる。
「……もしかして、」
速水さん
「助平なことしようとしてます?」
「助平って……
まぁ、あたり?」
「なんじゃそりゃ、!」
ふふふっと笑いながら私はまた一歩彼に近づく。
「じゃぁまたあとで。」
軽い“それ”をして(やっぱり助平なこと)、速水さんは自宅へと戻っていった。