意地悪な両思い
小悪魔の罠
映画デートから2週間が経った。
別段特に変わったことはない。
ただ一つ上げるとするならば、その後の連絡で、毎週金曜日は一緒に帰ることになった。
もちろん誰にも見られないように。
待ち合わせはあの書店。
時間差で退社。
だいたい、私がさき。
速水さんいわく、私が後だと顔がにやついて怪しまれそうだから。(そんなことないやい)
仕事が本当にあっぷあっぷなときは無理かもしれないけど、一緒に帰りたいから意地でも金曜日に仕事を回さないようにしてる。
今日はそんなうきうきの金曜日―――。
「市田!」
「はーい!」
お昼をとり終えて30分も経たないうちに長嶋さんに私は呼ばれた。
「この間頼んだ企画書どうなってる?」
えっと、それなら……
「あと一週間ほどで提出できると思います。」
「順調だね、ありがとう。」
大事な報連相。長嶋さんは相談しやすい空気をいつだって出してくれてるから、本当に助かってる。
「用件ってそれですか?」
「あぁううん。」
軽く首を振り、長嶋さんはまた口を開いた。
「来月から取り掛かる仕事があって、商店街で行うイベントなんだけど。
それを市田に手伝ってもらいたいと思っててね。」
「はい!」
商店街か……また時間あるときに資料室で勉強しとこうかな?
「まぁ来月からで全然間に合うから、それは大丈夫なんだけど。
なんか下の部署が若干人手足りないらしくてね。
市田もし余裕があったら手伝いに行ってあげてくれないかな。」