意地悪な両思い
もう13時か……。
そうこう仕事に取り掛かっているうちにいつの間にか時間は経ち、そろそろお昼を意識する時刻。
「市田。」
再び長嶋さんがふらっと声をかけてくる。
「さっきのアンケート余りなかった?」
「一枚だけならありましたよ。」
ほらここにと、しまっている引き出しを開けて見せた。
「それ、あとで内川に渡しといてくれない?
隣の部署足りなかったみたい。
下の階行ってた時に内川に声かけられてさ。」
「そうでしたか、じゃぁ渡しときますね。」
忘れちゃいそうだから、早めにキリがよいところで内川くんの所へ行かなきゃな。
私は引き出しから取り出して、目立つところにそれを飾る。
「あ、市田昼飯はとった?」
「いえ、まだですけど。」
「丁度いいし、今とったら?
体もたないぞ。」
「あ、そう……ですね。」
うんと心配気な様子で頷く長嶋さん。
本当は今やっている仕事が終わってから、ご飯をとりに行こうかと思ってたんだけど……
「じゃぁ、これからお昼いただいちゃいますね。」
そういうことならキリの良いところ関係なしに、昼食を先にとっちゃおう。
「うん。」
私の返事に納得したのか彼はデスクに戻っていく。
あ、でもアンケートだけは渡しにいっとこうかな。
お昼とってたら益々忘れちゃうだろうから。
ちょっとだけどきどきして私は席を立った。