意地悪な両思い

「速水さんもお昼いかれないんですか?」

「んー、今日終わりそうにないから、軽くあとでとっとくぐらいかな。
木野はちゃんととれよ。」
 ごくっと俺はコーヒーをまた飲む。


「なんか最近、楽しそうですよね速水さん。」


「え?」
 突拍子もない一言にぱっと俺は彼女の方を振り向く。肩まで伸びたふわふわした髪の毛から覗く彼女の横顔は、少しだけ口元を緩めてて

「良いことありました?」
 小首をかしげて俺を見つめてきた。


「……俺、そんな顔にやついてる?」

「ふふっ。さぁ?」
 彼女はまた両手で持ってるコーヒーに向かって息を吐く。

「今度また5人で飲めないですか?」

「5人って?この間の?」
 彼女はこくんと頷いた。


「速水さんと、内川くんと私と、長嶋さんと。

…市田さん。」


「あー、どうかな。
聞いといてみるけど。

長嶋のとここれから忙しいだろうから。」

「だって、速水さん私と飲んでくれないし。」

「酔った木野は大変だから。」
 えー、そんなことないですよぉと一歩椅子を近づけてみせた彼女に、自覚ないから大変なんだよと笑ってかわせて見せた。


「内川くんと3人で飲んでもいいですけど、内川くん速水さんとっちゃうんだもんなぁ。」

「そうか?」

「そうですよぉ。


……まぁ長嶋さんたちいても、市田さんに速水さんとられちゃうんですけど。」
 そこで彼女は試すかのように俺を一瞥をした。

「そんなことないだろ。
あの娘は……


長嶋と話すし。」


「ふーん?」
 またしても木野はアヤシイ目つきで見てくる。

ってなんでそんな、夫の浮気を疑う妻みたいな目で俺は見られないといけないんだろうな?

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