意地悪な両思い

「でも知ってます?
速水さん。

市田さんの株、最近急上昇中なんですよ。」

「ん?」

「最近可愛くなったって。
まぁ元から影のファンはいましたけど、表立ってきたというか。」

「ふーん。」
 名探偵のように語って見せる彼女の話を半分受け流すように、俺はまたコーヒーを飲む。



 木野はこういう噂話本当に好きだからなぁ、どっから仕入れてくるんだ。
今度市田に、木野に気をつけろって言っとかないとな、ってもう既に警戒してるかもだけど。

「たぶん彼氏さんとかできたんだと思うんですけど。」

「うん。
まぁそりゃできてもおかしくないだろうね。」
 当たりだ、あたり。

木野当たってるから、
そこらで変に探るのはよしてくれよ。


「で、私的にはーー」
 ちらりとそこで木野は俺を見る。



やべ、俺ってばれてる?
と、次に彼女は不自然ににこっと笑顔を浮かべた。



「速水さん


……だと思ったんですけど、周りは違うんですよね~。」


「あぁ、そう。」
 そこで俺はまたコーヒーに逃げ込む。


やば、木野また当たりだ。
こえーなー、女の勘って。

市田が会社には内緒にしておきたいって言ってた気持ちがごめんけど、初めて分かった気がする。


しかも無下には扱えない俺と同じ部署の後輩だし、また市田に謝っとかないとだなこりゃ…。
木野のことおっかないのに、丁寧にいつも対応してくれててありがとうって。

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