意地悪な両思い

「何か、嫌なところありますか?
直してほしいトコとか。」

「なんで?」
 彼は顔をぱっとあげ、首を少し傾ける。

「なんとなくっていったら語弊があるかもだけど。

わたし、気づかない内にやなことしてそうで。」
 日本語あってるかな、間違ってないよね?


「別にないけど。」

「…そっか。ならいんですけど。」
 でも速水さん気づいてる?


そう言いながら私に目を合わせてないこと。
ちっとも表情が柔らかくないこと。


触れてた手だって、



ぱっと離した……こと。



「市田の良いところつぶすようなこと、俺したくないんだよね。」

「え?」

「や、なんでもない。」
 そこで彼は誤魔化すように笑う。
この話はおわりねって続けて言いながら。

そう言われたらそれ以上追及できないことを彼は知ったうえで。


付き合うってこんなだったっけ。
嫌なことをそのままほったらかしにして、話し合うってことをしないままなぁなぁにお互いしたうえで。

速水さん。

ねぇ速水さん。



「そろそろ戻ろっか。
バレたら誤魔化しきれないし。」


「……うん、だね。」
 から笑いを私は浮かべた。


 電気を切って人気がないか確認すると先に彼が出る、運よく誰も廊下にいない。

「じゃぁごめんけど、手伝いお願いね。
気を付けて早く帰れよ。」
 彼は私の頭をポンと撫でる。

「うん、速水さんも。」
 先に部署に入ってったのは速水さんだった。

< 70 / 140 >

この作品をシェア

pagetop