意地悪な両思い

溶けて紅潮してかたまって

　そうして雨宮さんたちの手伝いをして、結局私が家に着いたのは9時を過ぎた頃だった。


バスにゆられながら送った連絡。

『今日はお疲れさまでした、ゆっくり休んでください。』


　会社を出るときも速水さんのデスクには明かりがついてたから、おそらく私の方が早くに帰ったんだろう。ご飯を食べて、お風呂を上がって携帯を確認したら『ありがとう』って返事が来てた。

また連絡するとも、そのあと続けて。


ところが、土曜日にも日曜日にもなったって、トーク画面がそれ以上更新されることはない。

それは仕事が始まってもそうで、何度か自分から送ろうとしたものの、
遂には金曜日になっていた。


『ごめん、今日一緒に帰れないや。
市田は仕事どう？』

　おまけに速水さんがくれたのはそんな内容。


そりゃ勝手に、
週末に連絡くれるもんだと思ってた私が悪いんだけど。
次こそは一緒に帰れるって思ってた私が悪いんだけど。

あーあ、2週連続ふられちゃった。
こうなりゃもう笑うしかない。


速水さん、本当は忙しくないんじゃないかな。
一緒に帰りたくないからなんじゃないかな。

ひとり夜道を帰りながら、嫌な方向に考えてしまって。


でも、だから、そんな風に考えちゃう自分が嫌で、
週末の日曜日の夜、また勇気を出して

『今週の金曜日は一緒に帰れるよね？』
　って送ってみたわけだけど。

お昼休憩12時を迎えようとしている月曜現在、まだ既読すらついていない。

「うぅ……。」
　仕事中に何気なくでる、ため息の成り損ない。
私ばっか彼を求めて、ぽつりと残されてるみたいだ。


　でも、そんなだから、隣の品川さんに

「何か仕事ミスした？」
　っていつかの時みたいに気づかれちゃったんだろう。

「あぁちょっと仕事が溜まってて……」
　社会人失格かも、私。

仕事の精にまで影響が出てきてしまってるんだから。


「そういえばこの間のデートはうまくいった？」
　けど彼女にそう聞かれちゃったからもうだめだ。


「それがぁ……」
　半べそ状態で品川さんに助けを求めてしまった。