意地悪な両思い

「市田さん。」

「え?」
 すると先ほどまでとは少し異なる雰囲気で、品川さんは私に目をつむるよう指示してきた。

想像してみて。

残業で遅くなった日、疲れたーって会社を出ます。

帰ったらとりあえずご飯だな~とか、お風呂その後入らなくちゃな~とかそんなこと考えながらバスを降りて、家について。

「ここまでおっけー?」

「はい。」
 安易に考えれる光景、私のマイニチそのもの。


「うん、でもね。」

「ん?」

「いつもと違って玄関前に誰かたってます。」
 暗がりでよく見えなくて、そしたらその人がパッとこっち見て。

あ、やっと帰ってきたって言うの。


私はそこで自然と目を開ける。


「……どう?迷惑?」
 彼女の言葉に少し考えて、私は首を振った。


「でしょ?」

「彼も嬉しいって思ってくれますかね?」

「もっちろん。」
 そこで彼女が浮かべてくれた笑顔は、一層あったかいもの。


「市田さんはいろいろ我慢しすぎ。」
 仕事でもだけど!

「返事は?
まだなんだよね?」
 そこでもう一度携帯を確認すると、速水さんからの連絡画面は今だ未読のまま。

「じゃぁ、ごめんなさい金曜日私が無理になりました!
ってひとまず嘘をついて。」

「えぇ?」

「いいのいいの、ちょっとの小悪魔は恋愛に大事!」

「な、なるほど。」
 なんかこういったらあれだけど、品川さんが今だけ木野さんに見えるや。ってそんなこと言ったら品川さん怒るかな?


「で、金曜日はまたお気に入りの恰好をして。
うん、完璧。」
 まぁ若干勢いに押されてる感じはあるけど、一人で考えてたら絶対たどり着けなかった答えだよね。

品川さん、ありがとう。


「今度こそエネルギー補給しておいでね。
で、彼にも元気あげておいで。

絶対喜ぶから、ね。」

「うん。」

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