意地悪な両思い
「何かあったんだろ、こんな急に来て。
市田がするにしてはちょっと意外というか、
よっぽどのことがあったのかなって考えてたんだけど」
「……ハズレ?」
「あ、うん……。」
そんなことを考えている素振りなんて、さっきまで臆面に出してなかったのに。
私の心が落ち着くのを待ってくれていたのかな。
「話したくないなら話さなくてもいいけど。」
「あ、ううん。違う、違う。」
黙ってるのはそういう訳じゃなくて、むしろ話がしたいから来たわけで。
「あのね。」
「うん。」
私はゆっくり口を開く。
とりあえず、お昼に品川さんと話していることから伝えてみた。
「品川さん?」
「知らない?私の席の隣の。
小さいお子さんがいるから、うちの部署に異動してきた……」
黒髪の髪をポニーテールだったり、ハーフアップだったりでいつも可愛らしく結ってる女性なんだけど。
「あ、分かったわかった。
ふーん、市田仲いんだ?」
「最近お喋りしてる、かな?
っていっても休憩中にちょっとってくらいだけど。」
「いいじゃん。」
彼はそこでシンクを背にして上半身を軽く斜めに寄り掛かる。
「で、……速水さんのことを聞いて貰ってて」
ってこれ、本人に言うのってどうなんだろな?
そう思って躊躇ったが、他に言葉が浮かばなので本当のことをそのまま伝えることにする。
「俺のこと?」