意地悪な両思い

「お腹いっぱいになったね。」

「ですねー。」
 二人してパンパンに膨らんだお腹をさすりながら、食べ終わった私たちはキッチンで仲良くお片付け。

私も速水さんも大部お腹空いてたらしく、
食べ終わるのに20分とかからなかった気がする。


「市田、台拭きそれ使ったらいいから。」
 そう流し横にポンと置かれてる布巾に視線をやってくれた速水さんは、

今日食器洗い担当で、
私が机の上を片づけたりお皿をふいたりの諸々担当。

メニューがお鍋だから使っているお皿も少ないおかげで、片づけはすぐにすんだ。



「市田お酒飲むでしょ?」
 キッチンの換気扇の下、タバコに速水さんは火をつける。

「あ、じゃぁちょぴっとだけ。」
 一服したら適当にもっていくからと言ってくれた彼に甘えて、私は先にテーブル前に座った。


換気扇をつけているとはいえ、漏れてくる彼のタバコの匂いに若干酔う私。

そりゃ部屋全体に速水さんの匂いがしてるけど、
大人の香りっていったらいいのか、


ともかく速水さんがすることすることに首ったけらしい。



 ちょっと経って、ふうーと最後と思われる煙を吐き出した音が聞こえると、

私が買ったおつまみとビールと、
これはもともと冷蔵庫に買っていたらしいピーチ味のチューハイを「ん。」と差し出し、速水さんも傍に座った。

ここにお邪魔したときと違って、
彼がソファ前で私がテーブルの縁が短い方。


「梅のお酒も冷蔵庫にもう一本あるけど、市田ちゃんそんなお酒強くないしね。

今日はそれだけね。」
 弱いのは本当だから、何も言い返せずにいる私に彼は笑う。

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