意地悪な両思い
んー、4チャンはクイズ番組かぁ。
クイズって気分でもないしなぁ。
5チャンはさっき開いてたところだから、まだニュースしてるだろうし……、8チャンはっと。
するとそこで丁度良く10時を迎えた。
要はスペシャルでない限り、番組が切り替わるそんな時間。
テレビの時計は隅っこに小さく表示されてるから、
私はその時気づけなかったけど、8チャンネルで今期10時にしているドラマは―――
「わっ!」
そう。
私が今声をあげちゃった通り、
今期しているドラマはどろっどろの恋愛もの。
前回の回想シーンから始まったらしいが、
初っ端から繰り広げられてるのはまさしくドロドロにふさわしいベッドシーン。
艶めかしい肌が合間合間布団から覗く中、
オレンジ色の光の下色香あふれる声が度々漏れる。
せっかく落ち着けたってのに。
あーもうなんてタイミングなんだろう!
慌ててチャンネルを変えようとするもんだから、
「あっ。」
手元がくるって床に落としてしまうそれ。
しかもそんなタイミングで、
「出たよ~。」
「ふぇ!?」
速水さんがお風呂場から出てくる。
タオルで髪をふきながら、最初はただ番組を見てるなぁとしか思ってなかっただろう彼も、私の慌てふためいている様子に状況を掴んだようで。
「あー……市田ちゃん何やってんのかな?」
くすりと笑い声をあげながら私の隣に座り込む。
「ち、ちがっ!たまたま画面開いたら!
これが!」
「はいはい。」
本当のことなのに、速水さんは全然相手にしてくれない。
「おー、色っぽ。」
しかも画面を見ながら、他人事のようにちゃっかり楽しんじゃってる。
あーもう、よりにもよってなんでお風呂から出てくるのが今なんだろう!
速水さんのばか。
「ん、リモコン。」
「いいです、もういらないです。」
ぷいっとわざとらしくそっぽを向いてみせる。
本当速水さんのばか。
「え、なんで怒ってんの?」
「お風呂行ってくんの!」
「はぁ。」
ちょっとからかっただけなのにと笑う速水さんを無視して、私はお風呂場に入った。
持ってきた洗面用具などが入ったポーチを忘れず持って。