意地悪な両思い

 そのままぺたんと扉にもたれかかるようにして、その場に尻もちをついた。

 私のお風呂場と違って無駄に物がない速水さんのバスルームは、右に湯船に繋がる扉。
脱衣所は左の壁中央に洗面台と、その右横に洗濯機。

左には三段づくりの私より少し低いぐらいの木目の棚があって、
その頭上の壁に収納が設置されている。


当然ながら彼が入ったばかりのそこは、目に見えるぐらいもくもくと湯気が舞っていて。

同時に香るシャンプーの匂いとか。
使ったらしい濡れたタオルが洗濯機の縁にかけられて。

所々に感じられる彼の痕跡が、
なぜだか私をドキドキさせる。



 そういえば、さすがに部屋着は持ってこれなかったんだよなぁ……。
今日資料とか会社に持っていくものただでさえ多かったし。

どうしよう、速水さん貸してくれるかな。
三角ずわりに移行した私は、両ひざの上に頭を預けた。


体、ピカピカに磨かないとなぁ。
そりゃ昨日も十分すぎるぐらいお風呂入ってたけど……。

だって。ねぇ?
今日。私たち。


……速水さん、“そういう”ことだよね?



「市田?」

「え!?」
 またまたなんてタイミング、扉向こうから突如速水さんが声をかけてくる。

「ちょっと開けてもい?」

「え?あっ、はい。」
 慌てて立ち上がって私は彼を迎えうった。


「なんでそんな直立なの?」

「いや、ちょっと。」
 例え速水さんが、そう面白がって言ってきてるからって、その場に座って不埒なこと考えてたからなんて正直に言えないけど。


「ごめん、タオルとか準備してあげるの忘れてたから。
これ使って。」
 彼は頭上の戸棚から、真新しいタオルを渡してくれた。

御礼を言いながら、とりあえずバスルーム扉横にあるポールにかけておく。

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