意地悪な両思い
「あと、俺のでごめんだけど。」
「え?」
「これよかったら着て。
俺の部屋着で申し訳ないけど。」
ここ置いとくねとまた差し出してくれたのは、クローゼットから出してくれたらしい無地の黒のパーカー。
下まで同じような生地の緩いズボンを用意してくれてる。
空いている棚の一番上にポンと置いてくれた。
「湯、抜くだけ抜いといてくれたらあとは全然適当でいいからね。
掃除とかしたら逆に怒るからな。」
「…ありがとうございます。」
「絶対しようとしてただろ?」
「そ、そんなことないですよ?」
「はいはい。」
じゃぁゆっくり入っておいでと彼は扉を閉めた。
そうしてようやく動くことに決めた私は、持ってきたポーチの中に忍ばせておいた洗面用具を取り出すと、とりあえずお化粧を落とすことにした。
ティッシュオフすると、旅行用のシャンプー類を取り出しいそいそと服を脱ぐ。
バスルームに入っても、何だか落ち着かない中シャワーで軽く体を流すと、チャポンとそのまま湯船につかった。大目に入れてくれたのか、余裕で肩を超すぐらいの湯船の中で三角ずわりしながらぼーっと過ごす。
隅々まで洗わないといけないのに、
そんな悠長なことをしてるから余裕で速水さん以上にお風呂に入っちゃってた。
体をふいて着る速水さんの服は、なんだかとてもあったかかったよ。