意地悪な両思い
扉をそっとあけてポチンとお風呂場の電気と、お湯のスイッチを切る。
「……お風呂頂きました、ありがとうございます。」
バスタオルで髪をふきながら若干顔を隠して、テレビを見ている彼の背に私は声をかけた。
「お茶でも飲む?」
「あ、じゃぁ頂きます。」
座ってていいよと、彼は立ち上がって二つグラスを取り出した。冷蔵庫から取り出したお茶をコポコぽとついで、どうぞとテーブルに置いてくれる。
「ありがとう。」
私は早速一口含んだ。
お湯に長いことつかっちゃってたから喉ちょっと乾いてたんだ。
「なんのテレビ見てたんですか?」
「ん?トーク番組みたいなやつ。」
「あぁ、もしかしてあれですか?
おっきな女の人と男の芸人さんとキャスターさんの三人で喋るやつ?」
「おーよく分かったね。」
彼もそこでお茶をごくっと飲んだ。
「服、やっぱ市田にはおっきいね。」
続けて、貸してくれた今私が着てるパーカーの袖を軽く引っ張って見せる。
上は袖を軽くまくってるからどうにか良い感じ。
そうでもしないと、うらめしや~って言ってくる幽霊みたいになってしまうんだ。
下はひもでぐいっとあげて履いてるから腰は大丈夫だけど、
太ももから下が露出しててとても恥ずかしい。
「かわい。」
そうなんか、速水さんは微妙に嬉しそうにしてるけど。
まぁ喜んでるならいんだけどさ?
「タオル置いてきます。」
私は一旦、バスルームに戻った。
そうして、軽くかぶっていたバスタオルをたたんで彼がしているように洗濯機にかける。
簡単にしてるようにみえるけど、でも私これ相当な覚悟。
だってすっぴん!
速水さんに見せる初すっぴん!
気分はもう部屋を真っ暗にしてほしいけど、そんなことは言えないから軽く一段明かりを落とすとして。
さりげなーくあとは速水さんと距離をとろう。
幻滅されませんように。
明日起きたらもうすぐにでもお化粧するんだから。
おそるおそるリビングにまた戻る。