意地悪な両思い

 扉を開けた途端、

「そう言えば今更だけど、」

「へ?」

「いやそもそも俺の家に誘ったのって、DVD見ないかって話しだったなぁと思って。」

「あぁ!ほんとですね!」
 すっかり忘れてたや。私はまたテレビの前に座る。


「せっかくだしなんか見る?
眠くなりそーだけど。」

「そうですね…」
 時計の針は11時前、今から見たら半端なところで終わること間違いなし、

「まぁ明日起きて見てもいいしね。」
 そう言って速水さんはテレビ台のラックから、何本か出してくれる。


一本はカーアクション、もう一本はスパイのアクションもの。

絶対これ見たら泣けちゃうんだろうなぁって奴や、
速水さんには少し意外な恋愛ものもある。


「速水さんどういう系な気分ですか?
いっぱいありすぎて私決めれそうにないや。」

「俺が決めたら意味ないじゃん。」

「まぁそうなんですけど……。」
 ばかだなぁと笑う彼に、眉を八の字にさげる私。

結局、目をつむって選ぶという荒業を使って見ることになったそれは、
有名な外国人俳優さんが演じるブラックコメディものだった。


 ひとつ明かりを落として、映画を見てる雰囲気に少しでも近づける。
音量は夜だから、もちろん小さめだけど。

見始めて15分、映画の世界観が分かり始めたぐらいだったかな、

「寒くない?」
 速水さんは三角ずわりして床に座ってる私を気にかけてくれた。

素足をかばうように腕をまわしてたから、寒がってるように見えたんだろう。
大丈夫だよって答えたのに、いいからとクローゼットから取り出してきてくれたひざ掛けを渡してくれる。


速水さんはそのままソファに横になった。
左手を枕代わりにして、すっかりくつろぎモード。

速水さんも本当は、私がいるってことにどこか緊張してたのかもしれない。

「面白い?」

「うん!」
 よかったと安心したように微笑んでくれた。

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