意地悪な両思い

 そのまままた15分。
特に会話もしないままぼーっと映画を見る時間が続く。

一緒の部屋にいるってのに、こうも何もないと寂しくなってくるのはなんでなんだろう。

手を繋いだり、彼の体の一部分に軽く触れたり。
服でもいいから速水さんを感じたくて。


―――触れて来たらきたらでパニックになるくせに。
すっかり甘やかされてるから、速水さんのせいで我儘具合が増した気がするよ。


「速水さん?」

「……。」
 声をかけるも返答がない。
小さく出し過ぎて聞こえなかったのかな?

「…速水さん?」
 ところがまたまた返事なし。


まさか寝てたりしないよね?
耐えかねた私はそろっーと上半身だけ起こして、膝歩きで彼の傍に近寄ってみる。


彼は頭を私側に向けてたから覗き込むとすると…

「どーしたの?近く寄ってきて」

「わ!」
 速水さんは捕まえたとばかりに、枕にしてた腕をほどいて私の手をぱっと掴んだ。

「ね、寝たのかと!」
 一気にパニックになる私。

「市田ほっといて寝る訳ないでしょ。」
 意地悪な顔を浮かべてる速水さん。

どうやら1回で返事してくれなかったのは、わざとらしい。


私がこうやってまんまと罠にかかるのを待ってたみたいだ。



「で、どーしたのかな?」

「う、うぅ……」
 その様子じゃ、寂しがって寄ったってこともばれてんるんだろう。
そんでもって、そう素直に言えない私のことも分かってて。


「市田ちゃん?」
 やらしいなぁ、本当にもう。

「どーしたのかな?」
 観念した私は小さく言葉を発する。

「……ひざ掛け入ってください。

ちょっと、寂しいから。」
 本日何度目?


私の頬が赤く染まっちゃうのは。


そんでもって、

「かわいー。」
 そう速水さんが笑うのは。

「おいで。」
 彼は座りなおして、ポンポンとソファの右をたたく。


私はこくんと頷いて、いそいそとそこに座った。
彼は後ろから私を抱きしめて、私は彼の足にもひざ掛けがかかるように前を覆う。

完全に速水さんのテリトリーだ。
私がすぽっと埋まるように、足を開いてくれてるから。


「速水さんあったかい?」

「うん。最初からこうやって見てればよかったね。」
 こくんと返事しながら、本当ひざかけがいらないくらいだねと心内で私は思った。

今更ながら、速水さんと一緒なんだぁって強く感じちゃうんだ。

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