意地悪な両思い
「なんか最後まで見れそうな勢いだね。」
「ですね。
速水さんは本当眠くないですか?」
「俺は余裕。」
言葉通り、少なくとも私よりは眠くなさそうだ。
いつもどれぐらいに寝てるのか知らないけど、確かに私より夜更かし得意そうだもんね。
夜な夜な仕事をしてることだって、もちろんあるんだろうし。
私はそっと彼に体重を預ける。
映画が始まってそこで約1時間がたった。物語もいよいよ後編。
主人公が危険な目にあったり、大切な人が誘拐されちゃったり、ぴんと張りつめる場面が自然と多くなってく。
結構血しぶきとか過激だから、私も見ていて、思わず目をおおちゃったりするんだけど、速水さんは全然なんともなさそうで逆にそんな私の反応も楽しんでいるというか。
たまにふざけて
速水さんは私の頭の上で顎をぐりぐりと躍らしてきたりもするし。
それも結構緊迫したシーン、大事な場面で。
その度に、
「あ、もう!」
って私はいちいち怒るんだけど、
そしたら速水さんは自分が邪魔したってのに
「市田。
今、大事なシーンだからシー。」
ってわざとらしく真面目な顔をしてみせる。
それがいちいち面倒くさくて、
でも愛しくて。
「ばか。」
って笑いながら彼の方を振り返る。
そしたら、待ってましたとばかりに彼は私の唇を優しく奪うんだけど、なんかもう照れを上回るとろけ具合というか。
「しあわせ。」
そう思わず言っちゃう私は、ほっぺたがおちそうなぐらい、頬を緩めてること間違いなしだ。
「あ、ここから面白いシーンだよ、市田。」
「え、本当?」
結局、私たちはそんな感じで映画を最後まで見てしまった。