意地悪な両思い
真っ黒な背景の上を、出演者の名前が一定の速度で下から上へ流れていく。
結局見ちゃったや。
見る必要なんてないのに、ぼーっと私たちはそれを少しの間黙ってみていた。
「市田。」
「……ん。」
そう先に声をあげたのは速水さん。
「そろそろ寝る?」
こくんと頷くと、速水さんはテーブルの上に手を伸ばしてテレビとDVDレコーダーをそこで止めた。
豆球で照らされたお部屋、淡いオレンジ色の下で彼はゆっくり立ち上がる。
日付が回ったところで、電気は既に消していたから
テレビの明かりもない今、どんな表情をしているか詳しく分からない。
けど速水さんは「こっち。」と私の手をひいて、ソファから立ち上がらせてくれた。ひざ掛けはパサリとその場へ残して、そのまま促されるように私は静かに布団へ入る。
速水さんが右で、私が左。
今はまだ、向かい合わせ。
「寒くない?」
「ううん、あったかいよ。」
灰色の掛け布団の下には、薄い毛布を中に用意してくれていた。
「寝相悪かったらごめんな。」
「ううん、絶対私のが悪いから。」
カチカチカチ―――無駄な音がしない中で、響く秒針。
「速水さん?」
そんな中黙っとくのがいやで、意味もなく私は彼を呼ぶ。
「ん?どした?」
だから、
そんな風に聞かれたって何も言うことはないのだけど、
ただ呼んでみただけなんて言えないから
「もう寝ちゃいました?」
なんて変なこと。
「ふっ、起きてるよ。
そんな早く寝れないから。」
「ですよね。」
誤魔化し笑いを浮かべた私の額に、すぐに突っ込みの彼の腕がごんと落ちてくる。
「お前より先に寝たりしねーからさ、安心して。」
「うん、ありがとう。」
するといつの間にか、さっきまでグーだった彼の手がポンポンと私の頭を撫でてくれてた。
「まぁあれ。」
「ん、なに?」