意地悪な両思い

「市田が隣にいるのが違和感ありすぎて。
2回目だけどさ、あんときは付き合ってなかったし。」

「うん、だね。」
 ちょっと懐かしいや。

速水さんが風邪をひいて看病して、
私は結局その日家に帰らなくて。


「俺、熱あがったもん。」

「え、だめじゃん。」

「だって、部屋に好きな娘がいるとか興奮するでしょ誰でも。」
 ……好きな娘て。

「え、なに?」

「な、なんでもないです!」
 聞こえてたらまたつっこみが来ていただろうところに、

「で、で!次の日に―――」
 慌てて私は話をそらす。


「いつの間にか速水さんがベッドに運んでくれてて」

「うん。」

「はつ朝ごはん食べて、」
 いいな、こういうの。
ふたりの思い出を、二人で回想するって。


覚えててくれるって。



「で、速水さんと片づけして」

「うん。」

「その時に――あっ。」

「ばか!」

「いいからもう寝ろって、お前は。」

「え、へへへへ…。」
 思わず口元を布団で覆い隠す。
さっきはかわしたチョップを結局はくらいながら。


なんで私も速水さんも照れてるかっていうと、


初チューしたんだよね。


ここで。
キッチンで。

速水さんから、ふいふちで。
だから、私も十分恥ずかしいんだけど、
速水さんの方が照れてるらしい。



「ねぇ速水さん。」

「うるさい。」

「照れてるの?」

「いいから寝ろって。」

「ふふふふっ、照れてる。」
 つんつんと肩の所をつついても、もはや相手にすらしてくれない。


本当恥ずかしがり屋さんですね、速水さん。

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