涙が降る音がしたんだ。
「…んっ」

カァーカァーというカラスの声で夢から現実へと戻される。

ふわあと欠伸をした後に、背伸びをしてふうとため息をつく。
赤い夕焼けとこの土地の古風な建物がとても背景にあっていて、思わず口が緩んでしまう。

もしかしたら、こういう風景に疎く乏しかったのかもしれない。

この木陰もいい場所だ。
後ろを向いて自分のズボンのポケットからスマフォを取り出す。

カメラ機能にして、木陰を取ろうと思えば、ふと視界に映るものがあった。
あまり目の良くない私は、眉を寄せて食い入るように視界の端を見る。

「よく見えない。もっと近づかないと。」

そう呟いて、木陰にゆっくりと歩き、近づく。
慎重に、慎重に、そんな思いでいざ近づいてみれば、一人の男の子。

「変な恰好…」


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