取り戻したい・・愛
✫✫残酷な誕生日
『海愛の一才の誕生日』
大賀は、盛大な誕生会をやってあげたくて
史華の家に来てお祝いをしていた。
大賀と正妻の美津の間には
子供を授かることは出来なかったから
大賀は、それはそれは
海愛を溺愛していた。
山のようなプレゼント
食べきれない大きさのケーキ
一流シェフに用意させた料理
全てに、海愛は目をキラキラ
させて喜んでいた。
その姿を春仁は目尻を下げて
見ていた。
そんな幸せなひとときの時間に
思わぬ来客が・・・・
<ピンポーン>
史華が玄関に向かい
玄関を開けると
上品な着物を着て
夜なのにサングラスをかけている
女性が立っていた。
(やくざの世界をしらない史華)
「あの、どちら様で?」
と、訊ねると
その人は、
サングラスの奥からか
史華を頭の先から見下ろして
「ちっ、あんたかい?
家のにちょっかいだしてるんは?」
えっ、と史華が思っている間に
その人は、草履を脱ぐわけでもなく
玄関から入って行った。
「どうした、史華?」
と、春仁。
「史華さんじゃありませんよ。
あんたの子とあんたの愛人を
おがみにきました。」
「 美津?‥‥何しにきた?」
「あら、先程いいましたよね。」
と、言い合っていると
海愛が
「パパっ、だれ?」
ん?と、海愛を見る春仁は
美津を見る顔とは、
全く違い
美津は、怒りでワナワナふるえた。
「パパっ、おくつ。」
と、海愛は美津が草履をはいているのを
指さした。
それを見た春仁の殺気
「土足で上がっていいと
誰が言ったんだ。」
と、凄む。
海愛が、いるから
かなり押さえて言葉にしたが
史華も美津も、息が止まりそうだった。
見たことない父親の姿に
鳴き始める海愛に。
美津は手にしたビンを投げつけた。
「‥‥‥うるさ‥‥いっ!!」
その瓶は、海愛の背中にあたり
海愛の背中からは大量の血が流れた。
救急車で近くの病院に運ばれ
海愛は、一命をとりとめたが
海愛の背中には
15針縫う大きな傷ができた。
我が子も心配でたまらないが
海愛が救急車で運ばれる間の美津の
顔を見ていた史華は・・・・
春仁に美津を責めるのは
お門違いだと抗議をして
だいたい、悪いのは大賀で
大賀が全責任をとる必要があると
言った。
だから大賀は、
正妻の美津に処罰を与えることが
出来なかった。
だが、史華は、
美津をここまで追い込んだのは、
自分達親子だと思い
大賀から離れる計画を立てた。
相談を受けた陽子は、
史華達親子を
自分の恩師夫婦の家に
隠す事にした。
恩師夫妻は、陸から離れた島に住んでる。
そこなら絶対に見つからない。
史華は、その島の小さな病院に
入院して治療をしながら
海愛と過ごした。
陽子は、二人に会いに行くのは避けた。
行けば、大賀にばれるとわかっていた。
私も二人の行方を探していると
思わせていた。
史華は、少しずつ居場所をかえて
慎重に慎重を重ねて島へと移動した。
もちろん、大賀は陽子のとこにも
訪ねてきた。
私は、大げさに大賀を責め立てた。
『史華が姿を消したのは
貴方のせい、二人を私に返して』
と。
それから二年が過ぎたとき
恩師から連絡があった。
『史華ちゃんが
会いたいと言ってるから
直ぐに来るように。』と。