再度アリスは夢を見るか

「う、わ…」

所々草が生えた石畳の路地を歩き、壁と壁の終わりに出る。途端、彼女は戸惑いとも感嘆ともつかぬ息を吐き出した。
壁と壁に挟まれた閉鎖的な路地から抜け、溢れんばかりの光、溢れんばかりの人の群れ、そして、同じようにそびえ立った鉄筋コンクリートの建物の数々。

その眩しさに目を細めては腕で光を遮るように目の前に翳すが、あまり意味をなさなかった。
しばらくその光景をぼんやりと眺めていた彼女は、とりあえず歩きだす。
どこに行くという目的もなく、ただ足を進めなければという意志に従って。
未だに霞がかった思考は、歩け、歩けと彼女に命じる。
それを疑問に思うこともなく、人の群れの中を歩く彼女の目に、ふと異質なものが飛び込んだ。
足を止め、その異質なものを見上げる。
そして、彼女はまた歩きだす。
今度は目的を見つけ、それを目指して。

彼女が見つけた異質なもの。

それは、コンクリートの群れの真ん中。
最も目を引き、最も大きく、まるで街の顔だとでも言うかのようなー………大きな、時計塔だった。
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