エリート御曹司とお見合い恋愛!?
「決まった?」

「わっ!」

 突然、声をかけられ、集中していた私は必要以上に驚いてしまった。

「そんなに驚かなくても……」

 声をかけてくれたのは言うまでもなく倉木さんで、私はすぐに謝罪する。

「すみません、どうされました?」

「いや、初めて来たって言ってたから、必要以上に迷ってるんじゃないかと思って」

「ご明察通りです」

 なんだか場慣れしてなくてかっこ悪い。でも、そんな私をわざわざ気遣って来てくれたのかと思うと、少し気持ちが温かくなった。

 それから倉木さんが、私のコーヒーの飲む頻度や苦味が得手不得手かなどを訊いてくれて、とりあえず豆の候補を絞ってくれる。

 それらを参考に、結局私はカフェラテを注文することにした。入れるミルクも全脂肪、無脂肪、低脂肪、豆乳や脱脂粉乳など様々なバリエーションから選ぶことができるので、優柔不断の私には、なかなかハードルが高い。

 注文を聞いてから、一杯ずつ豆を挽いて、ミルクもスチームしてくれるらしく、奥の方でじゅわっと蒸気が上がった。

 せっかくなので、勧められたアメリカンワッフルも注文する。すると、倉木さんもおかわりを注文して、私の分までさらっと一緒に払ってくれた。それがあまりにも鮮やかで、私は逆に狼狽える。

「いえ、そんな。自分で払います」

「いいよ、そんなたいした額じゃないんだから」

 すたすたと先に席に戻る倉木さんの後を追う。こういうときは、どうすればいいのか。これは仕事なのだから、本来、依頼した側の私が倉木さんの分まで支払うのが普通なのでは、とそんなことを考える。
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