エリート御曹司とお見合い恋愛!?
 そして会社でもあるB.C. square TOKYOに到着して、ホテル専用のエレベーターを目指す。それにしても、どこまでご一緒してもいいんだろうか。でもまだ今日のことのお礼も告げていないし。

「美緒もおいで」

 その迷いは顔に出ていたらしい。あっさりと顔色を読んだ倉木さんに促され、ちょうど一階に着いたエレベーターに私も乗り込むことにした。

 昨日も来たはずなのに、さらにはわざとではないとはいえ、泊まってしまったというのに、私はずっと緊張していた。

 そして部屋に入って倉木さんは上着を脱いでネクタイを緩めると、ベッドではなく手前のリビングルームのソファに腰かけた。

 私はおずおずとその斜め向かいのカウチソファに座る。新品のいい香りがして、ここで商談なんかもできそうだな、と思った。

「色々と話さずに、今日は突然ごめん」

「いいえ。でも驚きました。倉木さんと紀元さんがご兄弟だったなんて」

 一番驚いたのは、そこではないけれど。すると倉木さんは右手を口元にやった。この仕草を見るのも何回目だろうか。

「俺は離婚して母親の方についていったから。あいつは大事な紀元の跡取りだったし。もちろん、別れてからも父親は、随分とこちらを気にかけてくれていたから、そこらへんは感謝してる。
でも、このビルに入ってるコンサルティング会社に勤めることが決まって、あいつはそういうのを受け入れているみたいだけど、俺は紀元正一の息子だって色眼鏡で見られるのも嫌だったし、会社の跡を継ぐ気もなければ、あいつみたいにそれを期待されることもなかったから」

 倉木さん自身のことを聞くのは初めてで、それを語る倉木さんは少しだけ冷たい感じがした。
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