エリート御曹司とお見合い恋愛!?
「あー、もう。俺の柄じゃないね」

「いえ、そんな」

 なにかフォローしようとした瞬間、倉木さんは私の額に自分のをくっつけ距離を縮めた。顔に添えられた手が熱くて、血が沸騰しそうになる。

「美緒を誰にも渡したくない、奪われたくないんだ」

 瞬きすることもできずに倉木さんを見つめ返していると、じんわり視界が涙で滲んできた。

「ごめんなさい。私、倉木さんの言う通り、遊びで付き合えるような人間じゃありませんでした」

「知ってるよ」

 優しく微笑んで返されるので、瞳にためた涙が決壊しそうになる。

「もうヒーローは昨日で終わり。それでもいいなら、これからも俺のそばにいて」

 胸が詰まって言葉がでない。それでも私は奥歯を噛みしめて喉を震わせた。 

「私、倉木さんのことが好きです。だから、これからもそばにいさせてください」

「それが美緒の譲れないもの? 望んでいること?」

 確認するように尋ねられ、私は静かに首を縦に振る。そうすると、堪えきれなかった涙がついに頬を伝った。その涙を指で拭ってくれて、目尻に口づけられると、倉木さんが顔を綻ばせる。

「うん。ラーメンの他の味も試さないといけないし、ジムもまた一緒に行くって約束したし。ライブも一緒に行こう。それから、たくさんデートして、もっと美緒のことを知りたい。今度は家にもおいで」

 楽しそうにこれからのことを話してくれる倉木さんに、私も微笑んだ。なにげなくプライベートなことも織り交ぜられていることに幸せを感じて、終わりじゃなくて始まりなんだと思って嬉しさで満たされていく。
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