エリート御曹司とお見合い恋愛!?
 自然と笑顔になっていると、ゆっくりと顔を近づけられたので私は緊張しつつも瞳を閉じた。ほんの一瞬、唇に温もりを感じる。それが離れても、恥ずかしさのあまり、倉木さんの顔が直視できず、伏し目がちになった。

「風邪、移したらごめん」

「大、丈夫です」

 答えてから、倉木さんが、まだ体調がよくなかったことを思い出して急いで顔を上げる。思ったよりも近くで倉木さんと視線がぶつかったかと思えば、再び唇が重ねられ、あまりの不意打ち具合に私は目も閉じられなかった。

「っ、あの、まだ横になって」

 唇が離れた隙に言いたいことを告げようと思ったが、すぐに再び口づけられ続きがあっさり遮られる。いつの間にか腰に腕を回され、反対の手は顔に添えられていて、逃げることができない。

 角度を変えて何度も触れるだけの口づけを繰り返される。その間、息の仕方が分からなくて、心臓も壊れそうだった。

「そんなガチガチにならなくても」

 至近距離で倉木さんが困ったように笑っている。緊張をほぐすように、優しく頬を撫でてくれるが、それでも私の心臓は痛いくらい打ちつけていた。

「す、すみません」

「謝らない。ごめん、少し焦りすぎた。ずっと美緒に触れるのを我慢してたから」

 予想外の倉木さんの言葉に私は激しく動揺する。我慢って一体……。

「あまりにも美緒が可愛くて無防備だから、何度も手を出しそうになったけれど、これは仕事だって必死に自分に言い聞かせてた。こんな俺のことをヒーローだって言ってくれる美緒を裏切りたくなかったし、傷つけたくなかったから」

 さらっと紡がれる言葉に私は赤面するしかない。そんな私の頬に倉木さんは軽く唇を寄せる。
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