エリート御曹司とお見合い恋愛!?
「でも、さっきも言ったように、もうヒーローじゃないし、遠慮しないから。怖がらせないように努力はするけど、覚悟はしといて」

「が、頑張ります」

 上擦った声で言うと、倉木さんはおかしそうに笑った。

「やっぱり美緒はおもしろいね。とりあえず、その服脱いでおいでよ」

「え!?」

 突拍子もない提案に私は声をあげる。倉木さんは少し驚いた顔をしてから意地悪く笑った。

「言葉足らずでごめん。変な意味じゃなくて、いつまでもその格好だと疲れるだろ。バスローブもあるし、シャワーでも浴びて着替えておいで」

 自分がとんでもない勘違いをしていたことを恥ずかしく思いつつ、私は全力で首を横に振って遠慮の意を示した。

「そんなお気遣いなく! 帰ってからでかまいませんから」

「帰さないよ」

 それまでと違って、あまりにも真剣な表情と声に、私はとっさになにも言えなくなる。

「もう一泊とってるから美緒も泊まっていきなよ。料金は人数じゃなくて部屋代だし」

「い、いえ、そんな」

「美緒」

 低く通る声で名前を呼ばれ、私はなにも言えなくなる。

「どうしても難しいなら、かまわない。でも、俺は美緒と一緒にまだいたいんだ」

 そんな言い方は、そんな誘い方をされてしまっては拒否なんてできない。でも、きっと私がどんなに頑張ったって倉木さんには敵わないのだ。だから、私はなにも言わず、思い切って倉木さんに抱きついた。
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