エリート御曹司とお見合い恋愛!?
「うん、だからキスしかしないよ」

 そう言って耳たぶに唇を寄せられ、私はまた声をあげてしまう。

 抵抗できないようにか、落ち着かせようとするためなのかは分からないけど、いつの間にか自分の手に倉木さんの手が重ねられ、指を絡められた手はベッドに縫いつけられる。

 倉木さんはたしかに約束を破らなかった。おかげで私はされるがまま、体中至るところにキスされて散々泣かされる羽目になったのだ。

 優しく甘いものから、激しく情熱的なものまで。もう一生分のキスをしたんじゃないかって思うほど。最後は恥ずかしさもどこかに吹き飛び、すっかり溺れてしまっていた。

 朝起きたら、どういった経緯かは分からないが、新しい服まで用意されていて、倉木さんはなんでもないかのように接してくれた。

 でも私は、どうしても気まずくて、恥ずかしくて、まともに倉木さんの顔を見ることができない。そんな状況が続いて、今に至るというわけだ。

 とくに焦点を定めないまま伏し目がちにエレベーターから見える外の景色を眺める。すると突然、頭に温もりを感じた。

「ごめん、調子乗りすぎた」

 顔を上げると、倉木さんが私の頭に手をのせて、申し訳なさそうな顔でこちらを見ていた。その顔を見て、私は慌ててかぶりを振る

「い、いえ。私の方こそごめんなさい。本当に怒ってませんから。ただ、その……」

 最後は消え入りそうになって言葉が続かない。こんなことで意識しすぎな自分がなんとも情けないけれど、また頬が熱くなってくる。
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