エリート御曹司とお見合い恋愛!?
 恋愛に関しては、もうとっくに諦めている。二十四にもなって縁もなかった。自分から縁を持とうともしなかった。

 そんな私が、これから誰かを好きになって、恋愛して結婚できるとも思えない。それなら、お見合いでかまわない。相手の方さえ、いいんだったら。

「両親からの評価が絶対ってわけでもないだろ」

 それまで黙って話を聞いていた倉木さんが、しばしの沈黙の後、口火を切った。私はカップに向けていた視線をそちらに向ける。少し怒ったような表情だった。

「親に認められたい気持ちも分からなくもないけど、でも事務って言ったって、受付は会社の顔だろ? うちだけじゃなく、他のアッパーフロア連中のも含めて、ファーストコンタクトで、会社のイメージは大体決まるんだ。
容姿だけじゃなく、機転の良さ、会話能力、立ち振る舞い、そういうのを総合して持っているって認められたから、あそこを任されてるんだよ。それってすごいことだよ」

「……ありがとう、ございます」

 私はぎこちなくお礼を告げた。私は、あそこの受付ではまだまだ下っ端で、容姿も他の先輩たちに比べたら、煌びやかさや華やかさは足りないと思う。

 仕事能力もまだまだだ。けれど、倉木さんのあまりにもはっきりした物言いに、そんな謙遜は逆に失礼な気がした。倉木さんはカップに残っていたコーヒーを一気に飲み干す。

「前に言ったことなかったっけ? 会社を訪ねてきたクライアントが、桜田さんのことを褒めてたって」

 そう言われて、私は記憶を辿る。たしか私が、倉木さんと初めて話すきっかけになったときのことだ。
< 15 / 119 >

この作品をシェア

pagetop