エリート御曹司とお見合い恋愛!?
「倉木さんが受付になったら、女性ばかりに優しくしちゃいそうですもんね」

「お、言うね、桜田さんも」

 否定しないんだ、とおかしくなってしまい、私はつい笑ってしまった。倉木さんにふと視線をやれば、同じように笑ってくれている。

 その笑顔になんだか胸が苦しくなる。そして、倉木さんはなにげなく自身の腕時計に目を遣った。

「ごめん、そろそろ時間だ」

 気づけばあっという間に業務開始三十分前だった。私も制服に着替えなければ。

「今日は貴重なお時間、ありがとうございます。コーヒーもご馳走さまでした」

 立ち上がってお礼を告げ、倉木さんと共にカウンターにカップを戻す。カフェを出てエレベーターホールに向かいながら、私は先ほどから頭をぐるぐるする言葉をなんとか、声にしてみることにした。

「あの、倉木さんさえよろしければ、またお邪魔してもかまいませんか?」

 私の質問に倉木さんは振り向いてくれた。意識せずとも速くなる鼓動を抑えながら、付け加える。

「その、たまに、もし早起きできたら、またここに来てもいいですか?」

「それって、わざわざ尋ねること?」

 緊張して尋ねた問いかけには、あっけらかんとした答えが返って来て、拍子抜けしてしまう。そして、言いたいことが伝わっていなかったとすぐに反省した。

 これでは、単にこのカフェにまた来てもいいか、という内容で受け止められてもしょうがない。私が言いたかったのはそういうことではなくて――。
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