エリート御曹司とお見合い恋愛!?
「桜田さん」

 動く数字のランプを目で追いかけていると、いきなり名前を呼ばれて驚いた。その声にまずは驚き、姿を確認してさらに目を丸くする。

「倉木さん」

「ごめん、さっき言い忘れてた伝達事項があるんだけどいいかな」

 すぐに気持ちが落胆したのを感じ、次に自意識過剰だった自分に恥ずかしくなる。彼がさっきのとこで、そうではなくても、ここで私にプライベートなことで声をかけてくるわけがない。

「はい、代わりにお伝えしておきます」

 気持ちを悟られないように私もいつも通り返事する。すると倉木さんは小さなふたつ折りにしたメモを差し出してきた。

 メモを書く余裕がいつのまにあったのだろうか。疑問はあるが、また別の件かもしれない。私は素直に受け取った。

「これを渡しておけばいいですか?」

「いや、渡さなくてかまわないよ。桜田さんが確認して内容を理解してくれれば」

 どういうことか理解できないまま、その場で内容を確認する。そこには整っているけど、どこか癖のある字で

『業務終了後、四十階西フロアの第五小会議室で 』

 と書かれていた。すぐに意味が理解できずに私は、メモから顔を上げて倉木さんの顔を見る。
< 21 / 119 >

この作品をシェア

pagetop