エリート御曹司とお見合い恋愛!?
｢これ｣

｢急で悪いんだけど、大丈夫？｣

　あくまでも仕事仕様に尋ねてくる倉木さんに私は目を見張ったままだった。これは、もしかすると……。察しが悪くぐるぐるしている私に倉木さんは苦笑いを浮かべた。

｢難しいなら｣

｢だ、大丈夫です｣

　弾かれたように、ようやく返事をすると、倉木さんは再度笑ってくれた。そこで上階行きのエレベーターが到着する。中に乗っていた人たちが降りてきて、倉木さんはそちらに目を向けた。

｢じゃぁ、よろしく｣

　そして、やっぱりなにげなく頭の上に手を置いて、そのままエレベーターに乗ってしまった。遅れて、下階行きのエレベーターが来たけれど、私は呆然として、乗り過ごしてしまった。

　人がほとんどいなくなったエレベーターホールで私は再度、渡されたメモを見る。何度も何度も読み返して、内容を咀嚼すると私の心臓はまた音を立て始めた。

　呼び出されてしまったけれど、これって私宛ってことであってるんだよね？

　こんなことでいちいち心臓を高鳴らせていたら身がもたない。きっと倉木さんにとっては、特別なことなんかじゃないのだ。

　それから私は深呼吸して気持ちを引き締め直すと、再度下への呼び出しボタンを押した。
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